ハナちゃんの足跡

~最愛の友だちを記念して~


さようなら、ハナちゃん ハナちゃんの在りし日の姿 小太郎と小次郎 過去の日誌
ハナちゃん 小太郎 小次郎

2002年7月8日(月)

梅雨の晴れ間かどうかは知らないが、やっと夏らしい気候になってきた。近所を散歩しただけで、汗ばむ陽気。強い陽射しと、雲の合間に見える深みのある青色。1年を通して、僕は夏が一番好きだ。特に真夏の炎天下では、人通りもまばらになる。真夏の見沼自然公園は、5月連休の頃とは違って、ほとんど人がいない。そんな公園の広々とした芝生の上で寝転がり、池の上を渡ってくる南風を受けていると、暑さも時間も忘れることができる。まあ、多少は限度というものがあり、4、5年前に気温が40度近くまで上がったときには、危うく熱射病にかかるところだった。それでも、人のいない、風の音と蝉の声だけが響く空間は、世界で一番すばらしい場所だ。

もちろん、ハナちゃんをそこに連れて行くことはできなかった。できたとしても、毛皮を着込んでいる猫には、居心地のよい場所とはいえないだろう。もしその公園が近所だったら、夕涼みぐらいは一緒にできたかもしれない。でもハナちゃんは、僕が出かけるときは夏の日も家で留守番をしていた。とりわけ、学校のある日は。

ともに暮らすようになった昨年の夏は、さすがに8時間以上も外に出しておくのは心配だったので、家に居てもらうことにした。クーラーや扇風機を付けっぱなしで出かけるわけにもいかないので、ハナちゃんには少し暑苦しい思いをさせてしまった。ロフトの窓は人が入ってはこられないので、空けておいた。通気と、万が一のときのハナちゃんの脱出口にもなるように。

そして夏の間は、ハナちゃんはおとなしく留守番をしてくれた。けれども、ある秋の日、僕が夕方から知人と徹夜で話し込み、朝部屋に帰ってみるとハナちゃんがいなかった。僕の帰りを待ちきれなくて、ハナちゃんはロフトの窓から外へ出られることを発見してしまっていた。その翌週、学校へ行くとき窓を明けておいたら、やはり僕が帰ってくるとハナちゃんは外で待っていた。そのため、出かけるときはこの窓も締め切ることになってしまった。

今年の夏はどうしよう、と心配していたけれど、その必要はもうない。ハナちゃんは、死んでしまう少し前、ロフトの窓から部屋に戻る練習をしていた。その練習も、実を結ぶことはなかった。

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