ハナちゃんの足跡

~最愛の友だちを記念して~


さようなら、ハナちゃん ハナちゃんの在りし日の姿 小太郎と小次郎 過去の日誌
ハナちゃん 小太郎 小次郎

2002年12月9日(月)

部屋の中から、少しずつ荷物が減っていく。壊れた空気清浄機と、パソコンのスキャナを粗大ゴミの日に捨てた。押入れの中に散乱していた、旧バージョンのソフトウェアパッケージも、処分されつつある、そう、引越しの日が近づいているのだ。

ほんとうは引越しなどしたくはない。今まで4回ほど引っ越したが、なにより準備と作業が面倒だ。今の家に引っ越してきたとき、将来の引越しに備えて荷物は増やさないようにしようと決めていたが、それでもこまごました物がたまってしまった。そうした物の始末を考えると、期日も少なく頭が痛い。

生活上のこうした煩雑さだけが、引越しを重い気持ちにさせる原因ではない。今度の引越し先は、実家への帰還なのだが、老いた両親の面倒を見ていかなければならないことも、少しだけ気持ちを暗くする。それは「責任論」の問題としてではなく、自分自身の貢献度に対する不安だ。まあ、その辺りは、小太郎も猫の手を貸してくれるだろうが。

結局、僕がこの大して住み心地のよくない部屋に執着する理由があるとすれば、それはハナちゃんの想い出があるからだ。ハナちゃんが餌を食べていた場所、横に座っていた椅子、隣で寝ていた座布団の上、頭をこすり付けていた手すり、居眠りしていたテレビの上。部屋の中だけではない。家の前の道やゴミ捨て場も、近所の家の庭も、塀の上も、ハナちゃんの姿をよく見かけた場所だ。忌まわしい思い出の残るハナちゃんの事故現場も、離れるとなると寂しい気がする。歳を取ったら、思い出せなくなるかもしれない。

部屋の中の風景が、今はまだ少しずつだが、引越し直前には大きく変わるだろう。荷物を積んだ車が出るときは、この部屋に初めて来たときと同じ、殺風景ながらんとした空間に戻るだろう。そんな空間にすばらしい想い出で満たしてくれた猫たち。その中でも最も忘れがたい、離れがたい友だちだった、ハナちゃん。想い出だけでも、一緒について来ておくれ。

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